最近「雾霾」という言葉を天気予報でよく見かけるようになりました。「雾霾」は(wù mái)と発音します。
霧「雾」(wù)と、もや・スモッグ「霾」(mái)という語を組み合わせた造語で、特に冬場に大都市でよく見られる現象です。
レッスンの内容
雾霾とは
中国で霧「雾」(wù)は、気象学的に「気温が零度に近づき大気中の水分が凝固して、視界が1000m以下になる」現象と定めています。
この「雾」という気象現象は飛行機で移動しようという時に大きな影響を及ぼすことがあります。
Jī chǎng guǎng bō gang cái shuō le,yóu yú yǒu wù,háng bān kě néng yán wù。
机 场 广 播 刚 才 说 了,由 于 有 雾,航 班 可 能 延 误。
さっき空港の広報で言っていたけど、霧のせいで飛行機が遅れる可能があるんですって。
「霾」(mái)は日本語的な意味での「もや」とは少し異なります。
気象学的には「肉眼では見えない大気中の粒子状物質によって視界が10km以内になる天気現象」とされています。
jīn nián,mái hài yòu juǎn tǔ chóng lái。
今 年,霾 害 又 卷 土 重 来 。
今年もスモッグによる公害が広範囲にやってきた。
「雾」と「霾」が同時に発生し、災害性の天気現象の際に「雾霾」の注意報警報が発令されます。
「雾」は純粋に自然現象ですが、「霾」は大気中の埃や汚染物質が原因で発生します。
発生条件
「雾霾」は「特定の気象条件と人類の活動の相互作用の結果」であり、水蒸気、無風状態、逆転層、凝固核など、必要とされる気象条件がすべてそろって初めて発生するのだそうです。
もちろん「PM2.5」の存在も取り上げられるようになりました。「PM2.5」は「PM liǎng diǎn wǔ」と発音します。
「PM2.5」が自然現象によるものではなく、人為的活動によって発生していることは中国でも認められています。
大気汚染の指標
天気予報の予報項目の中に「雾霾预报」(wù mái yù bào)というのがあります。
大気汚染状態を時間ごとに表示する空気質量指数「空气质量指数」というものもあります。レベルは以下のように表記します。
优(yōu)
空 气 质 量 指 数(kōng qì zhì liàng zhǐ shù) 0-50
良( liáng)
空气质量指数 51-100
轻 度 污 染(qīng dù wū rǎn)
空气质量指数 101-150
中 度 污 染(zhōng dù wū rǎn)
空气质量指数 151-200
重 度 污 染(zhòng dù wū rǎn)
空气质量指数 201-300
严 重 污 染(yán zhòng wū rǎn)
空气质量指数 300以上
「中度」(zhōng dù)と「重度」(zhòng dù)は同じ音でも声調が異なるので注意して発音しましょう。
日中の基準の違い
この空気質量指数にはPM2.5の数値以外の物質の数値も含まれています。
参考までに数値をご紹介しますと、空気質量指数93で「良」だったある日のPM2.5の数値は「68μg/m3」でした。
日本の環境省が定める環境基準値では「1日平均値 35μg/ m3以下」ですから、「良」といえども決して侮れないことがおわかり頂けるかと思います。
経済発展の影に
「雾霾」という言葉についてのネット辞書の説明は少し矛盾しています。
『霾』の発生源となる粒子状物質の核は、原因不明の大量の煙や細かなほこりによって形成されます
と書いています。
つまり「原因不明」を強調しています。ところが続く説明には、
近年『霾』が発生する率が高くなっており、空気の質を徐々に悪化させています。
『霾』の中には数百種類に及ぶ化学的粒子状物質が含まれていて、人々が防備できない状態の際に人体の呼吸器系に侵入し、呼吸器系等疾患、心血管系統疾患、血液系統、生殖系統などの病気の各症状を引き起こしています。
と書いているのです。さらに
高密度人口の経済及び社会活動が必然的に排出する大量のPM2.5などの化学物質が、ひとたび大気の許容量を超えて排出されるときに、霧や無風状態などの気象条件と重なると大規模な範囲にわたって『雾霾』が発生します。
中国社会の経済発展に伴い、ますます多くの、とりわけ大きな都市で『雾霾』の影響が濃くなっており、これを効果的に抑制することが中国政府の優先的重点政策になっています。
とあります。中国社会の経済発展に伴う悪い意味での副産物であることを、認めざるを得なくなってきているということかもしれません。
空気汚染に頓着しない中国人たち
こうした悪化の一途をたどる空気の汚染を一般の人々がほとんど気にしていないことに驚かされます。「雾霾」が発生した午前と強風が吹いた午後ではこれほど視界が異なります。
それでも朝の通勤ラッシュで子供たちはマスクひとつせずに通学し、人々はあくまでも寒さを防止するために口元を覆うだけで通りを往来していくのです。