ある日、中国人の友人が我が家に来ました。彼女がかぶっていた帽子を取った顔を見てびっくり!彼女の額には、直径3cmほどの紫色の丸い型の痕があるではありませんか。
「どうしたの?」と聞くと、「風邪だったから自分で吸いふくべをした」と言います。
レッスンの内容
中国で人気の吸いふくべ
彼女のように、我流で吸いふくべをしている人を街中でよく見かけます。
老若男女を問わず、額の中央や、首筋から背中にかけての部分に、くっきりとした赤紫や青紫色の痕をつけているのです。
夏場ともなれば、若い女性は肌を露出した服装を身につけますが、この吸いふくべの痕を周囲の人に見られることは、いっこうに気にならないようです。
吸いふくべとは
中国では吸いふくべを一般的に「拔罐」(bá guàn)といいます。
街角でよく見かける看板には「按摩」(àn mó)、「保健」(bǎo jiàn)、「足疗」(zú liáo)などがあります。
これらは、いわゆるマッサージ店なのですが、そこで必ずと言っていいほどメニューに入っているのが吸いふくべ、つまり吸い玉療法です。
方法
大抵はガラス製の容器を使用します。アルコールを燃やして発火させた着火器をガラス容器に近づけ、容器内が真空に近くなった時を見計らって肌に吸い付かせます。
すると、皮膚はかなりの力でガラス容器の中に吸い上げられます。こうすることで、意図的に皮下の浅い筋肉部分を充血させるのです。
効果
結果として、その部位の皮膚、経絡、つぼを刺激することになり、体内毒素の排出と活発な新陳代謝を促すといわれています。
「拔罐」は薬を用いない、自然物理生態療法として古代より庶民に親しまれています。道具としてはガラス容器のほかにも、竹筒、ビニール製などでできたものがあります。
Jīn tiān nǐ men yào zuò shén me?
A: 今 天 你 们 要 做 什 么?
今日は何になさいますか?
Tā yào zuò jīng yóu kāi bèi,wǒ yào zuò guā shā hé bá guàn。
B: 她 要 做 精 油 开 背,我 要 做 刮 痧 和 拔 罐 。
彼女は背中のアロママッサージ、私は刮痧(かっさ)と吸いふくべをしてください。
Hǎo,qǐng nǐ men shāo děng yí xià,wǒ men yào zhǔn bèi zhǔn bèi。
A: 好,请 你 门 稍 等 一 下,我 们 要 准 备 准 备 。
わかりました、準備してきますので少しお待ちください。
吸いふくべは痛い?
日本の整骨院の先生の中には、痛くなるほどする必要はないとおっしゃる方もおられますが、中国のマッサージ店の「拔罐」は強烈です。
背中に吸いふくべをする際、マッサージ師は先に、客の背中にアロマオイルのような液体を塗ります。
そのあと、一つ目のガラス容器を吸着させ、そのまま背中じゅうをごしごしとこすります。客が「痛い」と言ってもお構いなしです。
【痛いところが悪いところ】
その理由は「通则不痛,痛则不通」(tōng zé bú tòng,tòng zé bù tōng)という考え方にあるようです。「痛くない所はめぐりがよく、痛い所はめぐりが悪い」というのです。
それで、客が痛いと感じる所こそ、しっかり治療すべき場所だと思うようです。続いて、首と肩の周辺、背中から腰にかけて吸いふくべを吸着させ、10~15分ほどそのままにしておきます。
足つぼマッサージの際にも、足裏に吸いふくべをする場合があります。
【色で判断】
時間がくるとマッサージ師は、ポンッ、ポンッと小気味よい音を立てながら容器を外してくれます。
自分では鏡を見なければわかりませんが、背中は丸い形の容器の痕で、まるで水玉模様のようになっています。
この容器を外した後の肌の色で、その場所がどれほどこっているか、めぐりが悪いかがわかります。
それほど悪くないなら肌の色はあまり変化がないか、明るいきれいな薄赤色をしています。悪い状態の場合は、赤紫色、紫色、青紫色の順で表れます。
時には、水疱ができてしまうこともあります。こうした治療後の肌の状態で、その人の健康状態を知るというのが吸いふくべの特徴です。
吸いふくべでデトックス
吸いふくべをしたあと24時間はシャワーをしないように言われます。体の状態があまり良くない時には、肌が熱を持ち、痛くてたまらないこともあります。
それでも、この方法で薬を飲まずに風邪を治すという中国人がかなりいます。
中国には日本のような風呂がなく、多くの場合はシャワーですので、こうした方法で「排毒」(pái dú)、いわゆる体の毒気を出すようです。
お店選びは慎重に
ただし、マッサージ店で行っている吸いふくべは、正統的な中国医学における吸いふくべとは異なるようです。
正しい知識に基づいて行っているとは言えない店やマッサージ師がいるのも実情です。
やはり信頼できる店かどうかを、中国人の友人に訪ねてから行く方が賢明かもしれませんね。