ときおり日本でも中国鍼治療院や中国鍼整体院などの看板を見かけますね。中国鍼に興味を感じる一方で、あの長い針を刺すのかと何となく怖さも覚えます。
今回はそんな中国鍼の起源と治療法のいろいろをご紹介しましょう。
レッスンの内容
中国鍼の起源
「中医针灸」(zhōngyī zhēnjiǔ 中国医学の鍼灸)は、ご存知の通り「针疗法」(zhēn liáofǎ 針療法)と「灸疗法」(jiǔ liáofǎ お灸療法)の総称です。
中国鍼は主に様々な種類の針を使用しますが、お灸をはじめ他の治療法との併用治療法も数多く存在します。
最初期の針は体に刺激を与えるように石を削って作った「砭石」(biānshí)でした。
それは身体のある部位が固くとがった物、例えば石やイバラなどにあたってぶつかった際に、もともと感じていた体の痛みなどが思いもよらず軽くなる現象を偶然に発見したのがきっかけだったようです。
Zhèyang gǔrén kāishǐ yǒu yìshi de yòng yì xiē jiānlì de shí kuài lái
这样 古人 开始 有 意识 地 用 一 些 尖利 的 石 块 来
cì shēntǐ de mǒu xiē bùwèi huò rénwéi de cì pò shēntǐ shǐ zhī chū xuè,yǐ jiǎnqīng téngtòng。
刺 身体 的 某 些 部位 或 人为 地 刺 破 身体 使 之 出 血,以 减轻 疼痛。
このように昔の人は意識的に鋭利な石の塊を用いて身体のある部位を刺激したり、人為的に身体を突き刺して出血させたりして痛みを軽減させ始めるようになりました。
二千年前にはすでに理論的に発展していた?
中国五帝の一人「黄帝」(Huáng dì)が西暦前2500年前後に書いたとされ、その名前をとってつけられた「黄帝内経」(Huáng dì nèijīng)という書物があります。
とはいえ実際は黄帝が著したのではなく、中国戦国時代から秦時代、最終的には前漢時代に至るまでの時間をかけて、複数の人物が情報を追加して記述したものだとされています。
その書物の中に鍼灸治療の理論と技術論が展開されているのです。
《Huáng dì nèijīng》shì Zhōngguó zuì zǎo de yīxué diǎnjí,
「《 黄 帝 内经 》是 中国 最 早 的 医学 典籍,
chuántǒng yīxué sì dà jīngdiǎn zhùzuò zhī yī,
传统 医学 四 大 经典 著作 之 一,
zhè běn shū diàndìng le réntǐ shēnglǐ、bìnglǐ、zhěnduàn yǐjí zhìliáo de rènshi jīchǔ,
这 本 书 奠定 了 人体 生理、病理 、诊断 以及 治疗 的 认识 基础,
shì Zhōngguó yǐngxiǎng jí dà de yí bù yīxué zhùzuò,bèi chēng wéi yī zhī shǐzǔ。
是 中国 影响 极 大 的 一 部 医学 著作,被 称 为 医 之 始祖。
『黄帝内経』は中国で最も古い医学典籍で、伝統医学の四大経典著作の一つとされています。
この書物は人体の生理・病理・診断、および治療の知識と理解の基礎を定めたもので、中国に極めて大きな影響を与えた医学著作でもあり、別名「医学の始祖」と呼ばれています。
宋の時代になると著名な鍼灸学者「王 惟一」(Wáng Wéiyī 西暦1000年頃)が鍼灸教育の教材として二体の人体模型を作りました。
これは銅で出来た原寸大の青年の全身像で、全身の354の「穴位」(xuéwèi ツボ)が刻まれていました。
中国鍼の治療方法
中国鍼の治療方法には二つの側面があります。一つは「针刺手法」(zhēn cì shǒufǎ)で、針を人体に刺す時と抜く時の繊細な手の動きで治療を施します。
もう一つは「针刺疗法」(zhēn cì liáofǎ)で、さまざまな種類の針を使って患部を治療します。针刺疗法のいくつかをみてみましょう。
温针法(wēn zhēn fǎ)
針を目的のツボに刺し、その後針の柄の部分に1.5-2cmの「艾」(ài モグサ)を巻き付けて下の端のほうから火を付けます。針を通して熱が伝わり、関節痛、胃腸の冷えに効果があります。
火针法(huǒ zhēn fǎ)
特製の針の先を赤くなるまで火で炙り、患部のツボに刺します。深く刺す方法と浅く刺す方法の二種類があり、神経性皮膚炎や痔に効果があるとされています。秦時代や漢時代からある治療法です。
皮肤针法(pífū zhēn fǎ)
複数の針を先端に付けた器具を特定のツボに浅く刺すか、皮膚の表面を軽く叩くことで刺激を与えます。幼い子供の治療に適しているため「小儿针」(xiǎo’ér zhēn)とも呼ばれています。
頭痛、近視、神経衰弱、神経性皮膚炎、胃腸関連疾患に効果があるようです。
刺络法(cì luò fǎ)
使用するのは「三棱针」(sān léng zhēn)です。針の柄は円形ですが、針の中心から先に向かって三角錐の形になっています。
主に「点刺法」(diǎn cì fǎ)、「丛刺法」(cóng cì fǎ)、「散刺法」(sàn cì fǎ)、「挑刺法」(tiǎo cì fǎ)の四種類の方法で治療します。
いずれも患部から少量の出血をさせることから「放血疗法」(fàng xuè liáofǎ 瀉血療法)とも呼ばれます。
「拔罐法」(bá guàn fǎ 吸引療法)と併用して治療する場合もありますが、瀉血量は多くても10CC未満とされています。肩こり、胃痛、不眠、暑気あたり、発熱などに効果があります。
皮内针法(pí nèni zhēn fǎ)
特殊な針を皮膚内に長時間刺したままの状態にし、刺激を継続的に与える治療法です。そのため「埋针法」(mái zhēn fǎ)とも呼ばれます。
針を長時間刺したままでも正常な日常活動に刺し障りのないツボを選びます。
0.5-1mmほどの深さに針を刺しますが、針を刺したままでいる時間は夏場なら長くて二日以内、冬場は3-4日程度です。病状と気候をみて針を刺す時間の長さを調節します。
まとめ
中国鍼で治療するにはきちんとした資格が必要です。とはいえ鍼治療は中国の伝統的民間療法と言われるように、祖父母などが行っていたのを見様見真似で覚え、それを家族や友人に施術する人も少なからずいます。
針が消毒された安全なものかも不安です。中国で施術してもらう場合は、必ずしっかり確認しましょう。