「腊肉」(中国版ベーコン)の中でもとりわけ有名なのが「四川腊肉」です。中国四川では新年の祝いの席や結婚式の披露宴の料理に欠かせないとされる家庭の味です。
その独特な味わいは一度食べると忘れられないと言われるのですが、どんな味なのでしょうか?
レッスンの内容
冬至の頃に作って春節に食べる
「四川腊肉」(Sìchuān làròu)は歴史も古く、国内外にも知られる四川の名産品の一つで「川菜」(Chuāncài 四川料理)に属します。
四川では多くの家庭で冬至の前後十日間頃に自家製の腊肉を作ります。長期保存できるので一度にたくさん作り、次の年になるまで食べるのが一般的です。
外気温が15度以下なら、風通しの良いベランダで三か月以上保存できます。さらに冷凍しても味や品質に影響がないので、冷凍庫に直接入れるのであれば何と消費期限は一年にもなります。
腊肉の作り方
あらかじめ塩や様々な香辛料や料理酒など混ぜ合わせておいた調味料「备料」(bèi liào)を作ります。
次に豚の三枚肉の塊5kgを、厚さ5cm×重さ1kg程の棒状に切り分けます。その豚肉に备料をたっぷり塗り、一週間から十日間漬けこみます。
漬け込んでいる間は、何度か肉の位置や向きを入れ替えて味を浸みこませます。取り出した肉を今度は「谷草」(gǔcǎo 藁)や「柏树枝条树叶」(bǎishù zhītiáo shùyè コノテガシワの木の枝葉)で約18時間燻製にします。
その後冷たい風で2週間ほど乾かして出来上がりです。
四川のある地域では燻製の工程を施さずに、直接高い場所で風に当てて乾燥させた「风肉」(fēng ròu)を作ります。
Lín dōng zhū féi,xiāngmín zǎi shā nián zhū,lìyòng yān xūn èr fǎ,
临 冬 猪 肥,乡民 宰 杀 年 猪,利用 腌 熏 二 法,
bǎozhèng zài kāi chūn zhī qián de ròushí gōngyìng。
保证 在 开 春 之 前 的 肉食 供应。
Zài méiyǒu lěngcáng fāngfǎ de shídài,yān xūn fēng gān,yǐ shì zuì jiā de chǔ ròu fāngfǎ。
在 没有 冷藏 方法 的 时代,腌 熏 风 干,已 是 最 佳 的 储 肉 方法。
冬が近づくと豚は肥えてくる。村人は一年の終わりに豚を殺し、塩漬けと燻製の二つの方法を利用して春を迎えるときに食べるための肉を準備した。
冷蔵方法のなかった時代に、塩漬け・燻製・風乾燥は最善の肉の長期貯蔵方法だった。
四川腊肉の特徴は香辛料の多さにあり
中国の他の地区にも有名な腊肉はありますが、四川腊肉の最も主流な作り方と比較した場合、最大の違いは四川腊肉で使う香辛料の多さです。
ご存知のように四川料理の味は「麻辣」(má là)で有名です。四川は花椒の原産地で、歴史的にも長い時代にわたって宮廷に花椒を貢いでいました。
四川の人々は最初の工程「备料」(塩漬け用の調味料)を作る際に大量の塩と花椒、そのほかの香辛料を混ぜ合わせるのです。
その味は?
長期間塩漬けにしているので、そのままではかなり強い塩味がします。それで調理する際は、温水で洗い、少し煮るか、蒸してから薄く切って直接食べます。
また他の野菜などと炒めて調理する場合には、塩分を加える必要はありません。
スーパーで販売されているものの中には着色料や余分な添加物が含まれているので、あまりにきれいな赤色に発色しているものは要注意です。
始まりは伝統的な習慣から
古い歴史のある腊肉が、四川のみならず各地で今も愛されているのは、漢民族や少数民族の「杀年猪」 (shā nián zhū)に由来しているようです。
一般的な農民は、豚を殺しても平素は家族で食べるのではなく、市で売ってお金に換えていました。それが春節の準備をする12月だけは例外でした。
殺した豚の肉は家族みんなで食べるために、腊肉にしたり、餃子の肉餡にしたり、そのほかの料理に入れる具材にしたりしたのです。
Tóngyáo zhōng shuō “xiǎohái xiǎohái nǐ bié kū,jìn le làyuè jiù shā zhū”,
童谣 中 说“ 小孩 小孩 你 别 哭,进 了 腊月 就 杀 猪”,
cóng yídìng chéngdù shàng fǎnyìng le rénmen pànwàng shā nián zhū chī ròu de xīnqíng。
从 一定 程度 上 反映 了 人们 盼望 杀 年 猪 吃 肉 的 心情」
童謡の中にも『子供よ、子供よ、泣くんじゃないよ。12月になれば豚を殺すから』と唄われています。
ある意味で人々が年末に豚を殺して食べるのを待ち遠しく思っていた気持ちを反映していると言えるでしょう。
まとめ
燻製の薫り高く、味わい深い四川腊肉。今度「川菜」の看板を見つけたら、そのお店で四川腊肉の料理を探して、ぜひチャレンジしてみてください。